だから冬は嫌いなんだ。

1番辛かった頃を思い出してしまうから。
後悔と嫉妬に駆られた日々を。

ふと「彼」もあんな毎日を過ごしているだろうか?
そんな想いが脳裏をよぎる。

まあ彼には支えてくれる人がいるけど。もっとも、彼は他人に甘えられる性格ではないし、「甘えていいんだよ」と言われても甘えないだろう。

何より、俺と違って、一年以上前に別れた恋人の話、とゆーか愚痴や様々な恨みつらみを、今の彼女にするような奴じゃない。

が、それ故に真摯に向き合い反省できる奴ではない。
そして少なくとも俺の知る彼はそれを一人でできるほど強い人間ではない。

俺と違って強固すぎるほどの精神的バックグラウンド(即ち実家)を持つために、自省や深い自問をすることや臨機応変な対応は彼にはできない(もちろん裏を返せば、俺自身は根無し草とも言える)。


それでも。

俺が変わったように、彼が変わるなら、俺は彼のことも救えたことになるのではないだろうか。

確かに最初は複雑な気分だった。別れてしまったとはいえ、本気で愛した人が、俺以外の男によって幸せになることへの嫉妬かもしれんし、無力感かもしれん。

でも今は、かつての恋人から時折聞く幸せそうな現況に、安心感と幸福を覚える(いやいいことばっかじゃないんだろうけどね)。
ああ、もう大丈夫なんだな、そんな気分か。
ちと違うかもしれんが、まあいい。



もし彼が、今は無理でも、こんなふうにでなくとも、いい意味で俺の知っている彼でなくなるなら、それはきっと彼にとってプラスだろう。

そしてそれこそが、本当の意味での救済になりうるのだろう。

まあ間違っても彼は俺に対しそうは思わないだろうけど。

それでも構わない。
彼女を救うこと、救ったことはただ彼を傷付けたことと完全なイコールじゃない。

俺が彼女を救ったことはいつか彼を本質的に救う可能性もあるのだ。



かなり自己正当化した、自己満足な俺の想いでしかないけれど、少なくとも俺は救われたのだ。

かつて愛し傷付けた人の、いま幸せな声に。